2005年11月18日

構造計算書を偽造

本当に考えられない事件が起きてしまった。
我々の業界としても恥ずべき行為です。
間違えたのではなく意図的に構造計算書を偽造するなんて
まったくもって信じられません。

通常設計事務所と言うのは、僕達のような「意匠」設計と
「構造」・「設備」設計に分かれている事が多い。
一般の木造2階建て住宅くらいの場合は、「意匠」の人が
構造も設備も見ることはあるが、今回のようなマンションや
ホテルといった建物の場合は専門の事務所が担当するわけです。


「意匠」の人は全体の取りまとめもしますが、特に構造の
計算まではタッチしません。
この構造計算と言う物は、本当に人によって考え方一つで
微妙に変わってくるものなのです。ですから、やや安全側に
なる人も居れば、ギリギリで考える人も居ます。
ギリギリと言っても限界値と言うわけではないですから
それなりの安全率はかかっていますよ。(笑)

昔と違って今は計算はすべてコンピューターのソフトで
行っていますから、逆に出てきた物を信じてしまいやすいんですね。
検査機構でもまさかそういう事をしているとは思っていないから
気付かずに通ってしまっていたんでしょう。
多分おかしいと思ったのは、現場の鉄筋工だったのではないでしょうか。
しかし、構造設計者がこれはこれで大丈夫だと言えば
そうなのかなとそれ以上は言えないのが実情でしょうね。

これは意匠の図面にもいえます。
手描きで描いていた頃は、なんとなく治まっているとか
いないとかがわかったものです。しかし、CADで描くように
なってから治まっているかのように見える図面と言うものが
出だしたんです。CADで描いているんだから治まっている
はずだと思っちゃうんですね。
ましてや、構造計算となると入力さえ間違っていなければ
答えはあっていると信じています。
その入力を触っちゃったみたいです。安全率の数字を小さくして
計算したようです。当然、鉄骨や鉄筋の大きさが小さくなります。
これでコストダウンをしているかのように誤魔化して、
この人に頼めば建設費が安く出来ると思い込ませて
仕事を受注していったのです。
今不況なのは分かります。仕事は誰でも欲しいでしょう。
しかし、やってはいけないことと、工夫してメリットを
出すのとはまったく違います。
現在の基準値の7割〜3割くらいも下回ると言うのは酷すぎます。
先日も堺の方で築30年くらいの公社住宅でクーラーの
スリーブ(穴)を無造作にあけて柱や梁の主筋を切って
しまうと言う、これまた考えられないミス工事がありました。
あまりにも無知と言うのか、構造上の安全をどう考えて
いるのか分からない人が多すぎます。

いろいろなところにモラルを欠いた人たちがいて、
これからこの世の中はどうなっていくのか。
想像するだに恐ろしい社会になって来ています。

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posted by ツボ at 19:48| Comment(5) | TrackBack(0) | 怒るで〜ぇ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんばんは。
問題の物件を買わされた方は、泣くに泣けませんね。弁済できるのでしょうか。
パキスタンの大地震でも、イスラマバードで、一軒だけ崩壊したビルというのがありました。今回の事務所が、創ったビルだけ大地震の時に、ひどく壊れるのでしょうね。インチキがはやく分って良かったです。

それから、八月の宮城県沖の地震で、停止した原子力発電所は、今も全機止まったままです。M7クラスの地震で、過去五万年で最大と想定していた地震加速度を超えてしまったのだそうです。これも、コストを抑える作為だったのでしょうか。
建物は大丈夫のようですが、肝心の「 設備 」がもたないのも困りものです。
原発が、第二のアスベスト問題にならないように祈っています。
Posted by U-2 at 2005年11月18日 23:12
コメント消えてしまいましたが・・・??
Posted by U-2 at 2005年11月18日 23:35
>U-2さん、たぶんコメントは残っていると思いますが?
夜に少し繋がり難い事があってコメントが反映されていなかったのかもしれないです。
ご心配をかけてスミマセンでした。

補償や弁済はどうなるか分かりませんが、周辺の人たちにも
まだ情報が出されていないわけでそちらの問題もありますね。
個人情報保護法の運用が歪で、各所で問題がおきています。
対象建物を早く発表すべきだと思います。
Posted by ツボ at 2005年11月19日 11:47
通りすがりです。
私は某都道府県庁で建築設備関係の仕事に従事しています。

私も以前民間の確認検査機関に出向していたことがあり、建築設備関係の審査をしていたことがあります。その機関には設備関係審査ができる人がいなかったためですが、今回の場合も建築確認が出された機関には、構造設計の審査がきちんと出来る方がおられなかったのではないでしょうか?
いずれにせよ、このマンションを買ってしまった方々の不安は計り知れないものでしょう。
一刻も早く事実関係を明確にし、補償なり対応策を施す必要があると思います。
Posted by ほけみん at 2005年11月20日 21:06
>ほけみんさん、貴重なコメントありがとうございます。

イーホームズに構造設計の審査ができる人がいたかどうかは
分かりませんが、かなり適当な審査をしていたような節は証言からも見て取れます。
審査自体が性善説の上に成り立っているのでしょう。
少なくとも現場感のない人が見ていたら、このような誤魔化しをされても全く気がつかないでしょう。実際には、現場での配筋検査にも来ない場合が多々あります。
検査官の数と能力的な問題が根本的にあるのではないでしょうか。

やっと対象建物を公表し始めました。
早急に対策と補償を決めて欲しいです。
Posted by ツボ at 2005年11月21日 13:22
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