「プロ高橋尚子」としての走りが出来なくなったというのが
引退を決意した理由のようです。
シドニーオリンピックでは、女子マラソンと言うよりも、
女子陸上界で始めての金メダルを取った。
これまで強いと言われながらも、金メダルには届かなかった
女子マラソンだったが、シドニーでは期待通りに、いとも簡単に
優勝してしまった。
その後も、当時世界最速の記録を作ったりと、順調に見えた
高橋選手だったが、調整に失敗したり、故障もあって思うような結果は
残せていなかった様に思う。
高橋選手に代わって伸びてきたのが野口みずき選手だったり、
粘りに定評のある土佐礼子選手だ。
小出監督の下を離れて「チームQ」を作り、単独で頑張ってきたが、
北京オリンピックの選考レースでも結果を残せず、出場する事が出来なかった。
このあたりで既に自分の力の限界を悟っていたのではないだろうか。
体調が万全のマラソン選手はいないと言われるが、高橋選手の場合
何かがおかしかったのではないか。
思ったようなタイムが出ずに、苦しんでいたと思う。
この時期に決断したのは、理解できるような気がする。
やるだけの事はやって燃え尽きたと言う彼女の言葉に嘘はない。
入賞狙いならまだ走れるかも知れないが、それでは高橋選手自身が
納得できないだろう。
「らしい」走りが出来ない。
28年前にホームラン30本を打ちながらも「王貞治のバッティングが
出来なくなった」と引退を決意した時の王選手と同じ物を感じた。
プロの選手として、期待に応える事が出来なくなった、
自分で納得がいかなくなった。
他の人から見ればまだいける。
自分に嘘はつけないのだ。
マラソン界だけではなく、陸上界に大きな影響を与えた高橋選手。
今後は、後進の育成にあたるのだろうか。
それともキャスターの道に進むのか。
いずれにしても、これからもいろいろな形で影響を与え続ける選手だろう。
本当にご苦労様、ありがとうと言いたい。
暫くは体と心を休め、また元気なあの笑顔を見せて欲しい。
高橋選手、お疲れ様でした。